探検家が減っている?

先日,某博物館の教授先生の退官記念講演andパーティーに出席してきたが,その講演のなかで日本山岳会の会員数に関して言及されていた。メンバーの平均年齢は現在64歳,年齢構成のなかで最大層を占めるのは60代であり,この年代だけで3000人ちょっとヒトが登録しているが,20代の会員に至っては30人ほどしかいないらしい。

日本山岳会

こういった状況は大学の山岳部でも同じであり,ほとんどの大学で山岳部は廃部から廃部寸前の状態らしい。確かに現在は,史上空前の登山ブームのように言われており,しばしばパーティーが山に取り残されるといったニュースもあるが,それは中高年に限った話であり,若い世代のヒトが積極的に山に登る話はほとんど聞かない。

この先生の分析では,いまの60代のヒトが10~20代であった時代,登山に限らず探検が盛んな時期であり,南極越冬隊とかエベレスト登山とか,いろいろな探検がおこなわれると同時に,自らの周辺にも多くの自然が残っていた状況だったという。そういった世代のヒトにとって,探検や冒険,登山が身近なものであり,そのことが現在の日本山岳会の会員構成に影響しているのではないかということであった。

ひいては現在見られる若者の自然離れ,フィールド離れといった現象が,若者世代のフィールドワーカーの減少にも繋がっているとの話であった。

この先生がフィールドワーカーをどのように定義しているかの話はなかったが,確かに古来おこなわれてきた「フィールドワーク」というものは,個々のディシプリンのなかでの「フィールド科学」として解体・吸収されてしまった感じもある。解体されることで分野による手法の精緻化は進んだが,本来のフィールドワークの醍醐味であった,フィールドでの現象を総体として,システムとして理解することは衰退しており,そういった意味でのフィールドワーカーが減少しているということであろう。

現在,中尾佐助の「栽培植物と農耕の起源」を読み直しているが,やっぱり面白い。およそ40年前の本であり,現在までに解った事と比較して細部では誤りもあるが,やっぱりなんというか思考過程というか,考え方というか,知識を総動員してものごとを考える方法が凄い。この時代では文献をあさるのも容易でなかったことを鑑みると,もの凄い勉強量ということになる。

全体としての構成と緻密な知識とのバランスをどう扱っていいのか解らないというのが,今という時代のフィールドワークのような気もする。「いまどき,こういう本(中尾さんのような本)は書けない」と時代のせいにするヒトも多い。でもやっぱり,細分化した知を再統合する枠組みをどう考えるかということは,取り組むべき課題なんでしょうねー。
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by shanggelila | 2007-03-28 13:38 | たわごと
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